殻を破って顔を出した芽が、
細くて弱弱しい茎に支えられて
陽の方向に向かって、伸びていた。
一体あの種の中には
何が入ってたんだ。
誰が命令したわけでもなく、
あるとすれば
宇宙のリズムともいうべき、
誰が指図するでもなく流れる、
悠久の空間。
その中でどれだけの命が育まれて、
渦巻いて、絡み合って、
存在してるんだろ。
誰かを好きになることも、
夢中になって
何かを追いかけることも、
ホントは理由なんかなくて、
言葉の枠には収まりきらなくて、
全て、あの種の中に
きっと宿っていた。
愛しさと切なさはどこか似ている。
有限と美しさはどこか似ている。
美しいだけでなぜ
涙がでるのだろう。
それでもやっぱり
愛してしまうんだろうな。
車のない車道がまっすぐに伸びて、
その先にある透き通った青が、
音もなく脈打っている。