俯瞰してこの街の景色を見渡した時、
初めて気づいた。
ビルが埋めつくしていた。
隙間など無かった。
毛細血管にも満たない道路が走っている。
現在地に焦点を当て一喜一憂する日々の中で、たまにこの景色を眺める必要があると思う。
点で物事を見ること、その場所を最大限まで倍率を上げてクローズアップしていくこと、これが日常の大部分ではあっても、これが全てになってしまったら、きっと何も知ることなく終わっていくんだろう。
東京にいなかったら歌っていなかったかもしれない。この街で、私は人間になったのだと思う。自然と対極するこの景色の中で、人間を知った。
この街を埋め尽くすビルに明かりが灯ると、それらはあまりにも小さく、はかなく、いつだって胸を締めつける。
同時に、果てしない闇の中で塵にも満たない小さな社会が、まだ機能している安堵感を覚える。