少しだけ欠けた満月は、
微笑む瞳のように優しかった。
あたたかさを湛えた灯が、
夜を満たしていた。
この世界で言う「運命の瞬間」は、
映画のワンシーンみたいに
ドラマチックで 、壮大で、
誰もがみんな憧れる
華やかな場面を描くけど、
本当はきっとこうだ。
この星空みたいな
広大な静けさに溶け込んだ、
中立な瞬間。
運命という言葉は
あまりそぐわない。
断捨離なんて感覚は
微塵も存在し得ないような、
軽快で、
それでいて安定した、
隙間なく満たされた
存在感。
止まっているとか、
何もしてないって事じゃない。
小さな頭で捉えきれない、
途方もないスピードで
無尽蔵の静と動が行き交い、
存在し続ける。
充満している
均衡。
完全に一致する言葉は、
今は思いつかない。
いや多分きっと、
そんなものないんだろう。
普段使っている言葉は、
時間という軸や社会という枠、
それらに裏づけられた
生活の手段だから。
だけど、
全部ひっくるめて
一言で表現するなら、
いちばん近い言葉は
永遠。
広い宇宙に佇む
たったひとつの魂が
見上げた月と繋がっている
スポットライトに照らされて
真っすぐに
瞬きもせずに
繋がっている
引力が拮抗する
創造は光の雫になって
こぼれ落ちていく
数珠繋ぎに流れ落ちていく
すり抜けていく
蛍の灯
思わず駆け出す
追いかける
不安なの?
どこにも行かないよ
月は穏やかに語る
燦々と
溢れ出す光を
受け止める闇夜は
讃美歌
見上げた一等星の輝きは
今までよりも少し
年月を重ねたように
見えた
いつでも
ここにあるよ
いつでもここが
星の降る丘
世界の真ん中
とわの星空
