夢を見て走っていた
泥だらけの世界の中
永遠と信じていた
だけどもう戻らない
薄れていく指先の
行き先さえ知らずにいた
本当は知らない振りして
しあわせと思った
この手の中に握りしめていた
歌う言葉のかけら
ゆっくり遠ざかる
季節の風通りすぎ
移りゆくもの 変わらないもの
流れていく電車の窓に映る
白く貼り付いたぼやけた輪郭
縁取られた穏やかな空の下
苛立つ程に世界は眩しくて
光輝いて
小さな影法師
この景色は気づけない
三月の薫り 微かな蠢き
震えて咲く両手の隙間から
こぼれ落ちるソラ
曖昧な雲が導く
どこまでも広がるソラ
失ったもの 手に入れたもの
その全てに私は生かされている
コイン
