ファウスト

浮力

乾いた空気に佇む樹々は
鍵盤のように立ち並んでいた

一面に広がる 柔らかな木の葉
セピアの彼方から幾年
積み重なった いのちの記憶が
溢れていた
満たされていた
でも見えない
とても繊細だから
聞こえない
断絶したカラダでは


鍵盤の間を漂う余白は
晩秋の切なさを纏って
和の音を紡いでいる

野生は大地を謳う
野生の叫びは
大地の叫び


見上げた赤と黄色は
ひとつのソラだった