帰らざる大河

浮力

翠玉の河が
広がっている
止水に溶け込んだ世界
緩やかな時の流れ
その先に
息をのむ程の落差
広大な滝は霧ひとつなく
静寂のベールとなって垂直に下り
再び眼下に広がる大河
突然
視界を遮った
翠玉を埋め尽くす
巨大な鯉
鏡に映ったような
鮮やかな紅白


真っ白になった
方向感覚
真空になって
貼り付いた脳

どこまでも続く
明鏡の空間
身の置きどころのない
無色透明
全てが
止まる


圧倒的な無と
凍りつくほどに
穏やかな
見知らぬ世界


でも
争いも
喧騒もなく
どこまでも透き通る
絵画のように
美しく

広大で
果てしなく
自由で
平和な世界だった



大丈夫だよ
こわくないよ

あなたの歩んだ瞬間は
地球のプリズム
無限の色彩
生きているよ
一緒に歌おう